立ち読み用ページ

ミオ 復讐の闘牌

 第一部東京スタート編

 

 第一話 悪夢

 

 東京のとあるマンションの一室で一人の女が悪夢にうなされていた。
「お前はただの客寄せパンダだ!」
「違う!私は客寄せパンダじゃない!」
 そうつぶやき、彼女は悪夢から目覚めた。しかし彼女は悪夢からの苦しみから逃れることは出来なかった。なぜならその悪夢は現実で、もうすでに終わってしまったことだったから。
 彼女の名は前園美央、日本プロ麻雀興行という麻雀プロ団体の元プロだった。夢の話は、美央が『新人王戦』というタイトル戦で、美央が団体が推す男子プロを勝たせるために、代表から八百長をするように迫られ、それを拒否した時に代表から罵倒された時のことだった。
 美央は八百長を拒否して決勝で全力で闘った。しかし、相手は三人が組んで対局し、美央はなすすべもなく敗れた。そして美央が全力で闘ったことが、代表に反抗的と受け止められ、美央は団体をやめさせられることになった。八百長を拒否したことは後悔してない。ただプロ団体の陰湿さに嫌気が差し、美央はもうこの業界から離れようと思っていた。
(他に何が出来るの?)
 美央は我に返ってふと考えた。麻雀界を離れる為に勤め先の雀荘をやめるのは簡単だ。だけど他の業界に移ろうにも美央はそれだけの特技も資格も無かった。ゆえに美央はすぐに麻雀界から離れることをあきらめた。
 美央はやる気の無い心を抑え、勤め先に向かう為にいつもの朝らしく洗顔し、食事を取って着替えて家を出た。
 勤め先の雀荘に向かいながら、美央は今後どうするか考えた。もはやプロで無い以上、雀荘は特別扱いはしないだろう。時給はある程度は削られるから、前よりは豊かな生活が送れなくなる。さらにゲストの依頼が無くなるからさらに生活は厳しくなるはずだった。
 しかし、美央は雀荘をやめる気はしなかった。熊本から上京してからは雀荘以外の仕事に就いたことはなく、慣れ親しんだ雀荘以外で働くにも抵抗があった。まして女だからと優遇される職場で、雀荘以上に待遇のいい業界は水商売ぐらいなものだから、美央は例え賃金が下がろうが、他で働く気にはなれなかった。
 電車を乗り継ぎながら、美央は今後も働き続けるつもりで勤務先の雀荘に向かった。そして雀荘があるビルにたどり着き、エレベーターのボタンを押して中に入る。そして三階のボタンを押した。エレベーターはほどなく三階に止まり、美央は勤め先の雀荘に入った。
「おはようございます」
美央は何事もなかったように挨拶した。そんな美央を店長は申し訳なさそうに
「前園さん、ちょっと」
と言って呼んだ。
美央は何事かなと思いながら店長の後を付いて行く。店の奥で店長が
「前園さん,興行辞めたの?」
と聞いてきた。美央はもう知られたのと思いながら
「はい」
と返事をした。それを聞いて店長が申し訳なさそうに
「実は興行から言われてて、前園を使うなって。それで申し訳ないけど今日でやめてくれない?こっちも興行にいろいろしてもらってる以上、向こうの言うことを聞かないといけないからどうしてもなんだけど」
 それを聞いて、美央はショックで言葉を失った。先ほどまでこの雀荘で頑張ろうと思っていた矢先に、雀荘側から冷たい仕打ちを受けることになってしまったから。美央は動揺し、言葉が出ない。店長もこれ以上きつく言えない。少しの静粛の後、美央が
「分かりました。今日は客打ちしていっていいですか?」
弱々しく美央は店長に最後のお願いをした。
美央の最後の願いを聞いて店長は
「いいよ。好きなだけ打っていけばいいよ」
と答えた。
「ありがとうございます」
願いを聞いてもらえたので、美央は店長に感謝して麻雀を打つことにした。
 店内は二人のやり取りがまるで無かったように、みんな普通に麻雀を打っていた。美央も平静を装い待合席に座りながら、一人空くのを待っていた。